2012-09-22

NFLのイメージマジック


NFLのオフィシャルフィルムメーカー『NFL FILMS』の
スティーブ・サボウル氏が、9月18日に亡くなった。
氏のNFLのイメージ作りへの貢献度は、計り知れないモノがある。

かの河口正史氏もコメントしていたが・・・

TV中継などで見るNFL映像は
“ゲーム”に焦点があてられている(あたりまえの話だが)。
しかし、NFL FILMSが捉える映像には、
ゲーム自体とは全く関係ないものが多々あり、
それらが素晴らしい、と。

ロングパスのシーンでは、
見事なジャイロ回転で飛んでいくボールのアップだけを
ひたすら追いかける事で、そこにあるドラマを表現する。

極寒の中のゲームのタフさを
凍り付くほど白くなっているプレイヤーの吐く息を
逆光のアップで、そしてスローで捉える事で表現する。
勿論、そのプレイヤーが誰だかはわからない。

また、
豪雪の中を走るプレイヤーの足元だけをドラマチックに
切り取ることで表現する。
これも勿論、そのプレイヤーが誰だかはわからない。

などなど・・・

全てがドラマに溢れている(陳腐な表現だが、
他に言葉が見つからない)。

そしてそこには、見るものを
「NFLって、迫力があって格好良い!」と思わせるオーラがある。

今では見かける手法かもしれないが、
スティーブ・サボウル氏はその先駆者と言ってもいいかもしれない。
スポーツに関して言えば、
そのマインドは『Number誌』にも受け継がれている。
と、勝手に思ってはいる。

前出の河口氏は、高校生の時にその映像を見て、
フットボールプレイヤーを目指したらしい。

フットボールというスポーツの、
ゲームそのものとは別の所に潜むイメージを抽出する事によって、
NFLのファンをさらに獲得し、
さらに、河口氏のように「プレイヤーになりたい」とも思わせる力が
NFL FILMSの映像にはあるということ。

自分も勿論、その映像がファンになった要素の一つになっている。

今となっては、こういった手法は広く知られ、使われているが、
「ホンモノは違うなぁ」とNFL FILMSの映像を見て、改めて思った。

こういったファン獲得の手法って、
○○○の何を”“誰に”“どのように伝えるのか、
ということだよなぁと考えれば、
NFLに限らず、いろいろなところで通じる話だと、改めて思う。

そして・・・

スティーブ・サボウル氏は、ホントにNFLを愛していたんだなぁ、
と思った。

作り手が、それを好きであればある程、
観る者に響くモノが、そこには紡ぎ出される、と。



余談:“フィルムで撮る”ということに、かなり執着していたようで、
   極寒の中の撮影時にはフィルムが凍り付かないように、
   キャメラの側で、ガンガンにお湯を沸かしたり、
   と冬のスポーツならではの苦労がかなりあったようだ。
   個人的には、機材がかなり進化した昨今、
   デジタルでもいいんじゃないの、と思う。
   結局は、機材が撮るのではなく、人間が撮るのだから。